ゼロの使い魔|OFFICIAL WEB SITE

キャスト/スタッフ

『ゼロの使い魔F』スペシャル対談

ヤマグチノボル(原作・シリーズ構成)×岩崎良明(監督 )
いま明かされる最後の「ゼロ」
(インタビュアー、構成:氷川竜介)

現在、好評放送中の「ゼロの使い魔F」。このたび、原作者であり、今作のシリーズ構成も勤めるヤマグチノボル氏と、監督の岩崎良明氏とのスペシャル対談インタビューが実現。最後のシリーズに至る経緯や、序盤の見所、そしてオリジナル展開へと向かう後半についてもじっくり語っていただいた。

【プロフィール】

ヤマグチノボル(原作・シリーズ構成)
1972年2月11日生まれ、茨城件出身。血液 型B型。明治大学政治経済学部卒。自身の関わるゲーム作品をノベライズした『カナリア~この想いを歌に乗せて~』(角川スニーカー文庫)で小説家デビュー。2004年からスタートした『ゼロの使い魔』はシリーズ累計450万部の大ヒット。アニメ第4シリーズにあたる『ゼロの使い魔F』ではシリーズ構成も務める。

岩崎良明(いわさきよしあき)(監督)
1964年、山口県山陽小野田市生まれ、兵庫県神戸市育ちの男性アニメーション演出家。千葉大学卒業。代表作は「ラブひな」「極上生徒会」「瓶詰妖精」など多数。

氷川竜介(ひかわりゅうすけ)(インタビュアー)
1958年生まれ、兵庫県出身。アニメ評論家。1977年、黎明期のアニメ・特撮マスコミで活動開始。アニメ雑誌やDVD、BD解説書、Webの執筆・構成で活躍する。技術的見地からのアニメ研究にかけては第一人者的存在。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査員。

4期から入った人にも 楽しんでもらえる展開を目ざして

4期から入った人にも 楽しんでもらえる展開を目ざして

―――――『ゼロの使い魔F』第4期のスタート、おめでとうございます。4期まで続く作品もなかなかないと思います。2期は「双月の騎士」3期は「三美姫の輪舞」と数字を織り込んだサブタイトルが続いてましたが、今回の「F」は何でしょうか?

ヤマグチ:
いろんな意味がこめられていますね。
岩崎:
「4(フォー)」とか「ファイナル」「フォーエバー」とか……。
ヤマグチ:
特に今回は関係者すべてがいろんな想いをこめたいと、製作委員会メンバーで割とシンプルというか抽象的な「F」にしたと理解しています。僕も非常に気に入っています。

―――――今回、第1期を担当された岩崎監督が再登板となった経緯は?

岩崎:
2期、3期の時は既に次の仕事が決まっていて参加出来なかったのですが、4期はプロデューサーから「ぜひ1期と同じく岩崎監督のテイストで」と言って貰えまして、「それなら」と引き受けました。立ち上げから携わった思い入れの深い作品ですし、最終シリーズですから、やりがいを感じています。僕にとってもライトノベル原作は初でしたし、当時はライトノベルからのアニメ化も今ほど多くはなくて、がんばりました。もともと『ロードス島戦記リプレイ』などファンタジーRPGの小説が好きで、よく読んでいたこともあって、映像化をかなり楽しみましたね。

―――――最初にアニメ化されたとき、ヤマグチ先生としてはどんな印象でしたか?

ヤマグチ:
やはり自分の書いたものとは違うものが映像として出てきますので、「こんな見せ方があるんだ!」と感動した記憶があります。動きがついてることや声優さんの演技も含めて、ぼんやりとしたものに明確な色がつく新鮮な感じもしました。ただ、キャラクターの解釈に関しては、僕が想い描いていたものと大きな違いはないんです。「やっぱりこんな感じだよね」と思うところとそれ以上のものと両方見せていただき、「まったく的外れ」という部分はいっさいなかったので、それはすごいことだなと感心してます。

―――――アニメ化では、どういった部分がポイントになったのでしょうか。

岩崎:
原作を読みこむことはもちろんですが、国内にある西洋風建築を見に行って雰囲気をつかむなど、勉強もしてます。大勢のファンの頭の中には、すでに映像があると思うんです。すべてをかなえるのは難しいにしても、せめて最大公約数というか「核」になる部分は外さないようにしようと。ファンタジーものはキャラクターもさることながら、異世界それ自体の楽しみが大きいと思うんです。世界観の把握を具体的なビジュアルにするのが苦労と言えば苦労ですが、『ロードス島戦記』のころから想像で映像化を重ねてきてますから、それもふまえつつ、うまく世界に入っていただけるようにがんばりました。
ヤマグチ:
いまのお話を初めて聞いて「おおっ!」と思ったんですが、僕も『ロードス島戦記リプレイ』などで育った世代で、それが自分のベースになってますから、その共通点があったからこそうまくいったのかと、あらためて思いました。映像だと、ラブコメのシーンもすごいんですよ。ルイズの鞭を振りまわすところなどは、まさに「生き生きと動く」というものすごく良い感じで、あれはまさに映像ならではのノリですよね。
岩崎:
キャラクターの「動き」は、小説にプラスできて厚みの出る要素だと思っています。可愛い動きや激しい動きのあたりは、キャラクターデザインと総作画監督の藤井昌宏さんやアニメーターの方々もキャラクターを相当気に入って、こだわっている部分です。より可愛くより面白く、より生き生きとした感じにしつつ、ちょっとエッチなところも入れたりする。そんな動きが、シリーズの積み重ねとして生きてきていると思います。
ヤマグチ:
長く続けてきた作品なので、本当に感慨深いですね。ここまで続けると、キャラクターにしろ作品の世界にしろ、思い入れ以上のものを感じています。

―――――ファンの方も、すでに実在の人物のように感じられているかと。

岩崎:
そこまで思っていただけるなら、本当にありがたいことです。キャラクターの関係も、1期から2期、3期とどんどん変わってますし。より親密になっていったり、より良い関係になってるのではないかなと思います。
ヤマグチ:
キャラクターも確実に成長していますね。小説も、今年で8年目になりましたし。
岩崎:
アニメも6年です。
ヤマグチ:
でも、感覚的にはあっという間なんですよ。2、3年くらいしかやっていないような印象もあって、「8年」とは自分でも信じられないです(笑)。物語内の時間も、まだ1年ちょっとしか経ってないはずですし。

―――――その長い時間の中で、今回ご自身で初めてアニメ版のシリーズ構成を担当されることになった理由は何でしょうか?

ヤマグチ:
1クールで完結ということが大前提だったので、「1クールだと原作通りやるのは無理でしょう」と感じたんです。ちょうどオリジナル展開について、スタッフからも相談をいただきましたので、あとは話し合いの中で、アニメはアニメで締めるのならば、全体の流れを決めるのは原作者の僕がやるのが妥当だろうということで、やらせていただくことになりました。僕としては「最後はこうなる」という基本は、原作とまったく変えていないつもりです。そこを押えたうえで過程を全然別ものにしたものです。見た目は全然違っても根っこは変えてませんから、僕としてはこれがベストではないかなと。

―――――岩崎監督とはどんな話をされましたか?

ヤマグチ:
僕から構成を出して数回打ち合わせを重ねて、いただいたご意見をフィードバックしつつ、何回かのキャッチボールで擦り合わせの作業をしました。構成自体は、そんなに長いものではなかったですし。
岩崎:
12話できれいに終わらせるために、どの辺にヤマを作ろうかとか、そういったことは僕たちの方で膨らませて、エピソードを各話に分けて、それを「どうでしょう」と見ていただきました。

―――――監督がヤマグチさんの構成を読まれたときは、どう思われましたか? これまでの小説から脚本にするのとは違いますし。

岩崎:
原作者のヤマグチさんご自身が書かれているわけなので、テイストとしてはまったく変わらない。それがありがたいことでしたね。それと「原作者の方がこう書いてますよ」というものがあることで、お墨つきというと変なんですが、現場で細かい部分を決めていく段階で非常に心強かったです。
ヤマグチ:
最後の締めくくりに近い方は当然詳しく書いてありますが、前半は割とシンプルだったんですよ(笑)。特にその部分は重点的に膨らませていただきましたね。
岩崎:
原作と変えるとはいえ、小説の大きな流れは拾うようにしてますし、キャラクターの成長の部分、特に心情の変化は外さないように心がけてます。最後の部分をヤマグチさんに細かく決めていただいたうえで、「ラストがこうなるなら、こういうことも前振りしておこう」という要素も盛りこみました。

―――――すでに3話で大きなヤマ場を迎えたので、視聴者も驚きだったと思います。

岩崎:
1クールものだと、10話、11話あたりでひとつのヤマを超えるために盛り上げる構成が多いですが、ひとつ目のヤマが3話にある構成は珍しいし、贅沢なつくりになってるかもしれませんね。
ヤマグチ:
僕としては1話から、いきなりクライマックス感があるんですよ。ファンのツカミっぷりがすごいなと感じました。かなり評判も良いみたいで、「まだ忘れられてないんだ」と嬉しかったし、驚きもあります。
岩崎:
これまでのファンも当然意識してますが、今回初めての方が1話だけ観ても「よく分らない部分はあるけど、これは面白いな」と思ってもらえるような感じを狙ってます。そんな方が「これは前のシリーズにさかのぼってみよう」と思ってもらえれば嬉しいですね。3期と4期は3年くらい空いていますし、僕のようにずっとアニメファンをやってると、たいしたブランクに感じませんが、中高校生なら3年は大きいですしね。スタート前に1期から3期までの「よりぬき」や一挙放送をしてハードルを下げていただいたのは良かったです。続編ものだと、途中からの人は入りにくい意識があるはずなので。
ヤマグチ:
始まったとき、ものすごく印象的だったのが「安定感のある面白さ!」っていう感想ですよ(笑)。面白さで「安定感」というのは、すごいことですから。僕自身、動いているキャラが久々だったので、ものすごく懐かしいのと同時に、才人とルイズのからみで「そうそう、いつもこんなふうにケンカしてたよな」と思ったほどで。やっぱり『ゼロの使い魔』なら、あそこから始まってくれないと(笑)。

新キャラクターふくめて 生き生きとふくらんでいく描写

新キャラクターふくめて 生き生きとふくらんでいく描写

―――――序盤で「ここはポイント」みたいなところはありますか?

ヤマグチ:
やっぱり3話がヤマですよね。シリアスな回なので、セリフなども重点的にチェックした記憶があります。本読み(※シナリオ会議)にも、度々参加させてもらいました。
岩崎:
今回はロマリアという新しい国、教皇や元素の兄弟など新しいキャラも出てきますから、状況説明や過去の説明もうまく織り交ぜつつ、物語としては「ルイズはどうなっていくのかな?」と興味をもっていただくことで、楽しく観てもらえるかなと。最後のエピソードにつながっていく基礎知識的な要素も、うまく話の中に入れこんでいます。「使い魔」とか「担い手」とかもそうですし、のちのち振り返って1、2、3話の教皇のセリフを聞き直してもらえれば、「あれ? ここでこんなこと言ってたんだ」という発見があるかなと。それがどこかは、お楽しみということで(笑)
ヤマグチ:
僕は2話の「レモンちゃん」にビックリしました(笑)。こうしてほしいとか、特にそんな話もしてなかったのに(笑)
岩崎:
たしか原作の担当編集の方から「この要素は外さないでくれ」と出た3つ4つの中に「レモンちゃん」があったんです。
ヤマグチ:
アフレコ収録のときに聞かせてもらったんですけど、ものすごく良い感じで、ムチャクチャかわいかったんです。
岩崎:
釘宮さんの演技もあいまって、自然とニヤけてしまいますよね。人気と実力のある方なので当然かもしれませんが、ああいう声や芝居がナチュラルにできるのは、ものすごい才能だなとあらためて思いました。ルイズ、才人のおふたりともアニメの現場だけではなく、CDやラジオなどでもかけ合いしてますから、長い時間をかけて、どんどん成長していった部分もあるんでしょうね。

―――――本当に存在感ありますよね。かけ合いのシーンは、声が入ることを前提に映像を組み立てられてるんですか?

岩崎:
釘宮さんの声質とか細かいことまでは考えないにしても、「こういう感じで言うだろうな」ぐらいは考えて、表情なども思いうかべつつ芝居を作っています。

―――――ヤマグチ先生も声優さんの声を多少意識することはありますか?

ヤマグチ:
小説を書くときには本当に文章だけ集中して見てますから、あまり音という要素は入ってこないですね。むしろ校正で読み返したりするときに声を思い浮かべて、「これはちょっと違うかな」と、ジャッジメントに使う場合はあります。
岩崎:
今回特に「こういう芝居で来るでしょう」とか「こういうふうに喋るだろうな」という部分は、他のキャラも含めてより生き生きと描くうえで想像しやすかったです。

―――――4期は他のキャラクターにも濃厚な展開が用意されてます。その点はどうですか?

岩崎:
原作後半でタバサはメインになってくるので、当然アニメのほうでも重要性が強くなっていくキャラクターと認識しています。オリジナル部分はあっても、原作の本質的なところは変えないように描こうとしていますから。元素の兄弟も、新キャラのアクション担当として、より新しい魅力を作品につけ加えてくれたと思っています。
ヤマグチ:
元素の兄弟は僕のプロットだとほんの少ししか書いてないのに、よくあれだけのキャラクターを作れますよね。すごいなと感心してます。
岩崎:
引き続き登場のキャラは、キャラクターデザインと総作画監督の藤井昌宏さんが、自分のなかでうまく原作の兎塚エイジさんの絵柄を消化して生き生きと描かれてるので、相互作用としての魅力が発揮されていると思います。今までにない個性を持ったキャラクターたちばかりなので、その個性の部分をていねいに描いていくことで、自然にキャラごとに立っていくと思っています。

ドタバタ要素満載のお風呂回でも気をつけている才人の描き方

ドタバタ要素満載のお風呂回でも気をつけている才人の描き方

―――――この先の展開についてもお聞かせいただきたいのですが、最初のヤマ場があった後、6話では「お風呂回」もありますね。

岩崎:
ひとヤマ越えたので、いつものゼロ世界に戻ってちょっとのんびりしようかと。
ヤマグチ:
ああいう「ドタバタ回」があると、『ゼロ』らしくて面白いですよね。同時にラストへの伏線も、次第に張られていくという感じになっていきますし。
岩崎:
まったりとしつつ、ルイズと才人を中心としたラブコメ面で平穏でない雰囲気になったり、いろんな騒ぎが起きていきます。その部分は「お楽しみ」ですね。
ヤマグチ:
才人がモテまくる中で、他のキャラクターとの関係も、微妙に仲が進んでいく。そんな見せ方は『ゼロ』ならではだなと思いました。その辺は気をつけて描かれていて、嬉しいですよね。
岩崎:才人は胸の誘惑にふらつきはしますが、基本的にはずっとルイズ一筋なんです。そこはブレないようにと。でもキスしたり、ちょっと誘惑に負け過ぎですよね(笑)。たまには負けないとお話にならないので、サジ加減が難しいところです。

―――――ルイズと才人のふたりだけの世界に入らないよう、キャラクターがうまく絡んでくるのがいいですよね。

ヤマグチ:
ただ僕としては、ラブコメのためだけに出したキャラクターはいないんです。アンリエッタにしろティファニアにしろ、みんなちゃんとした役目を背負って登場してきていて、お話を展開するために必要なキャラクターなんです。もちろんその上で、ラブコメを意識して絡ませることは積極的にやってます。ルイズと才人だけだと5巻くらいで終わってたはずですし、主人公がモテるほうが面白くなりますからね。どう考えても、よその世界から来たこんな冴えない感じの男の子がモテるわけないんですけど(笑)。それでもモテないと面白くならないですから、「きっとこうこうだから、この人を好きになるんだ」とモテる理由をがんばって作ってあげる。そのあたりもラブコメの醍醐味ですね。
岩崎:
やっぱりそこが良いところなんですよ。最初はむしろ嫌われているくらいのところから始まっているのに、誠意をもって努力したり、いろいろなプロセスがあって、それで好意を持たれていくというのが、この作品の魅力ですね。
ヤマグチ:
いつも割と苦労して理由をつけています。他の作品を見てると、逆に理由なくモテるキャラが人気あったりするので、「僕がやってきたことは何なの?」と思ったりしますが(笑)。たしかにスーパーアイドルに、モテる理由は必要ないですし。

―――――でも、その誠実さが『ゼロの使い魔』の魅力だと思います。作り手の誠実さが才人のみせる誠実さとシンクロしている感じが、お話を聞いててものすごくしましたね。才人にしても、考え方がしっかりしているだけに、他のキャラに対しても誠実にふるまおうとするから、かえってややこしくなるみたいな。そこが面白いと思います。

ヤマグチ:
ルイズと才人は、完全にくっついちゃってるわけです。普通のラブコメはくっついたら終わりですけど、その後の話をやっても面白いかなと思いまして、今はそこを膨らませてますね。ふたりで家を探しに行くとか、くっついてからの話も多くしているつもりです。アニメでもふたりで家を探しに行くエピソードは入れてます。ラブコメならあそこまでやらなくていいんですけど、現実世界だったらつき合ってからが実際は長いわけですし、むしろそこからが大変なわけです。そういうことをきちんと描いた作品があまりないので、それを少年マンガのアプローチでやったら面白いかなと。少女マンガなら、そういう作品もあるんですけど。

―――――監督は、こうしたドラマ作りに関してはいかがですか?

岩崎:
その辺は原作者にお任せと言ったら問題発言かもしれませんが(笑)、大事なところは押さえるようにしています。たとえば才人がアンリエッタやティファニアに色目を使うというか、浮気モードになることが多々ありますが、そのときは表情や芝居に注意して演出しています。本気で相手を好きになっているような描き方をしないようにと。「劣情に流された才人が迫っていく」みたいに描いてしまうと、才人とルイズの関係が壊れて裏切った悪い人に見えてしまうので、それは「なし」にしようと気をつけています。女の子にムリヤリ迫られるのって、それはそれで視聴者の方には楽しいかもしれませんし(笑)。

―――――このアニメは観てて気持ちが良いなと思うことが多いので、その秘密の一端が分かった感じです。

岩崎:
たとえアニメのキャラとはいえ、心が傷つくようなことを描いてしまうと、そこに引っかかってしまって楽しめなくなると思ってるので、いつも微妙なところを進むようにしています。このあたりは演出というよりは、むしろキャラクターを動かして芝居をつける段階で気をつけているところですね。

―――――お風呂回の6話もお楽しみありの上で、そういう要素が満載ですね。これはオリジナルですか?

ヤマグチ:
完全オリジナル回です(笑)。
岩崎:
サービス回ではありますが、その中でもキャラクターの関係が変化していきます。
ヤマグチ:
常に何かしらお話は進んでいて、動いている部分がありますね。なので、純粋な遊び回というのはないんです。

ティファやタバサの想いも交錯しつつクライマックスへ

ティファやタバサの想いも交錯しつつクライマックスへ

―――――その他のキャラクターの話もうかがっていきたいです。『F』ではティファニアの使い魔もキーになっています。

ヤマグチ:
ルイズと才人の関係は、やはり「主人と使い魔」ということが大きいわけです。どこまで言っていいのか分からないですが、そこにティファニアが、恋愛事情と物語の根底と、ふたつの軸で絡んでくる。そこが今回の面白さだと思います。これまでこういう「最大のライバル」は存在しなかったわけですから。ティファニアはルイズの次に人気があるキャラなので、活躍してほしいなとも思ってますし。
岩崎:
エルフで巨乳って、なかなかいないキャラですもんね。
ヤマグチ:
いないですね。ティファニアは要素足しまくりで、引き算使ってないので、すごいことになってます。ちょっと盛り過ぎ感はあるんですけど(笑)。

―――――映像でも、思いきり胸が揺れてますし(笑)。

岩崎:
あれはサービス部分ではありますが、これだけのボリュームがあるとね。髪がなびかないと不自然なように、歩けば揺れるのは動くのは物理的に当たり前だ、みたいな感じで描いてます(笑)。ティファニア視点からの話の進行や気持ちも、各話の要所要所で描いていて、お話と同期しながら変化していきますから、ファンの方には彼女の心情を追っかけてもらうのも面白いかなと。

―――――もうひとつの軸はタバサの戴冠式です。

岩崎:
たぶん、才人はタバサの気持ちには気づいていないんじゃないでしょうか。そこは非常に可哀そうなところですが、タバサにとっては片想いというか、初恋みたいですよね。彼女なりにいろいろ悩みつつ行動していくので、タバサファンからするとちょっとやきもきするかもしれませんが、彼女なりの考え方を追っかけてもらえれば、これも面白く観てもらえると思います。

―――――シエスタは逆にものすごく身近になってますよね。1話冒頭の印象で、余計にそう思えるのかもしれませんが(笑)。

岩崎:
たしかにシエスタは家族みたいな感じになってますね。最初のシーンは藤井さんが直接原画を描かれているので、格別ですね。
ヤマグチ:
あのベッドの上のルイズは、本当にすごかったですよ。
岩崎:
テレビアニメって、最初のワンシーンが視聴者の判断基準になると思うんです。ツカミとして、特に力を入れないといけないかなと。
ヤマグチ:
2話の「レモンちゃん」は作画も力入ってますよね。すごいなと(笑)。
岩崎:
作業するアニメーターも、かなりノリノリですしね。「歩いている」「何々する」と絵コンテに書かれていても、指示どおりの基本的な動きだけでなく、それプラスキャラクターの気持ちがはいってますから。もちろん、作画としては手間なんですが、あえてそれをやることでどんどん良くなる。そんなスタッフのがんばりに注目していただけるのは、ありがたいことです。

クライマックスの冒険活劇には 「こういうアニメが観たい」という想いが反映

クライマックスの冒険活劇には 「こういうアニメが観たい」という想いが反映

―――――「これが最後のシリーズ」ということで、逆に難しいところはありましたか? ファンとしてはずっとやっててほしいという気持ちもあると思いますし。

岩崎:
やはりルイズ、才人たちの関係に、ある程度の決着をどうつけるかということでしょう。ストーリー自体も世界の終わりというか、大きなクライマックスを迎えますので、今まで積みかさねてきたキャラクターの物語がどうまとまって完結を迎えるかというところに注目してほしいです。「どういう危機にするのか?」についても議論を重ね、いろんなアイデアを出しました。原作では、ハルケギニア自体が壊れていくんですが……。
ヤマグチ:
それをアニメでやるのは難しいだろうと。アニメでやるからには見て分かりやすいものがいいし、「僕はこういうアニメが観たい」という単純な判断で構成を切らせていただきました。僕の一番大好きな冒険活劇になっていると思います。そして、この展開は確実に1期を彷彿させると思ってます。1期を楽しんでいただけた方には、絶対楽しんでいただけると。僕にとっては、やはり何か飛ばなければアニメじゃないんです。
岩崎:
映像化する方としては大変ではありますが、それでより面白く見せられるならと。アニメの場合、キャラの動きにしても実際の人間よりは超人的な動きが多くなると思うんです。そういう実写にはない面白さ、アニメならではの表現を追求できたらと思ってますね。『ゼロの使い魔』もこれが最後ですし、藤井さんを筆頭に4シリーズやってきたスタッフにとっては、かなり思い入れがある作品でしょう。「最後のひとふんばり、みんなでがんばろう!」という感じでやってます。そうすれば、また番外編もできるかもしれませんしね。原作にもタバサのスピンオフ話とか、ルイズのお母さんの話が残ってますし……。あれ? お母さんとは言ってなかったかな?
ヤマグチ:
明言はしてないはずですけど、まあ、言ってるようなもんです。
岩崎:
『ゼロの使い魔』と銘打ったアニメは今回がおそらくラストなので、みんな思い残すことがないようにと。
ヤマグチ:
ちゃんと『ファイナル』ということにふさわしいエンディングにできたと思います。この「空を飛ぶ」というクライマックスを経て、ふたりの関係の結末も当然描かれますから、ぜひぜひ楽しみにしてください。コンテは目は通しているものの、やはり完成した映像を観て、「こうなるんだ!」と思ったときが一番楽しいんですよ。

―――――全12話のシリーズ構成を立てられてるからこその楽しさも感じられますか?

ヤマグチ:
僕は12話全部の緻密な構成を切ったわけではなく、「こういうシーンがあったほうが良いんじゃないか」という感じで、主にシリーズ構成作業を重点的に行ったのですが、たしかに僕の構成にあったシーンが出てくると「ああ、なるほど」と思ったり、シナリオ会議で提案させていただいた要素が反映されていたりすると、「おお!」と思うことはあります。

―――――今後、期待してほしいところは?

ヤマグチ:
オリジナル展開は1話から入っていますが、クライマックスに入っていくのは9話ぐらいからですかね?
岩崎:
何となく楽しい感じが続いていって、9話のラストくらいからグッとシリアスなクライマックスへ向かって、才人とルイズの話が中心になっていきます。ルイズも才人もお互いのことを、とても深く想っているわけです。前3シーズンと10話までの関係の積み重ねがあった上で、それを再確認して、さらにお互いを想う気持ちがより熱くなっていく。そんな展開になりますね。

―――――「ここに注目」というポイントが、もしあれば。

岩崎:
これは本当は強調するのはおかしいことかもしれませんが、「どのシーンも見逃さないように」ということでしょうか。軽いエピソードも重いエピソードも、実は最後に向かって何らかの形で密接に絡んでいくので。いろんなエピソードにいろんな伏線が散りばめられてあるので、1話から最後までじっくり観てください。

―――――ヤマグチさんはどうでしょうか?

ヤマグチ:
僕が観たい『ゼロの使い魔』ができていますので、ぜひいっしょ楽しんでいきましょう(笑)。
岩崎:
そうですね、ともかく楽しんで観てもらえばと。細かいセリフを隅々までチェックする必要はありません。「そういえばそんなことを言っていたような」とか、なんとなく思い出していただく程度で。もちろん2回観ていただけると、違った発見があると思いますよ。

―――――『ゼロの使い魔』の全体を通じて、想い出深いことは何でしょうか?

岩崎:
楽しい作品でしたし、原作の魅力を強く感じました。僕個人もこの作品の監督をやったことによって、「岩崎の作品ってこうなんだ」と認識され、名前を覚えられたりしましたし。かなりいろんな方の印象に残った作品ということで感慨深いですし、何よりも僕自身が大好きな作品なんです。
ヤマグチ:
僕も楽しい想い出は、いっぱいありますね。新鮮な驚きが、常にあった気がします。それは具体的なひとつひとつがどうこうというわけではなく、いっぱいあったこと……それが、一番大事なことだったかと。

―――――小説を書いてるときの気分とアニメとでは、ちょっと違うものですか?

ヤマグチ:
ええ、やっぱりいろんな刺激があって良かったですね。アニメを通じてお客さんの反応もよく見えるようになったし、それで裾野が広がったことが、いちばん大きかったと思います。アニメの魅力を通じて、原作に入ってきてくれた人がものすごく増えました。やはり楽しんでくれる人が増えたということ、それが僕にとって何よりも嬉しいことです。

―――――最後にファンの方々に、メッセージがあればお願いします。

ヤマグチ:
僕としては、もし未読の方がいれば「原作を読んでください」と(笑)。原作は原作で、まったく違った展開になっていますので、ぜひそちらも楽しんでください。
岩崎:
アニメだと尺の関係もあって、描けるのものの要素がどうしても減ってしまうんです。もちろん絵だからこそより深く描ける部分もありますが、ストーリーや細かい会話の面白さで、どうしても目減りする部分が出てくるので、一長一短だと思っています。なので、ぜひとも両方楽しんでもらえれば。
ヤマグチ:
ええ、両方楽しんでもらえれば、これに勝るものはありません。それぞれの良さ、魅力を感じていただければと。そしてラストの根っこは変わらないので、共通のものです。見せ方は微妙に違っても、伝えたいこと、やってることは原作と同じですから。

【2012年1月吉日 メディアファクトリーにて】