ゼロの使い魔|OFFICIAL WEB SITE

キャスト/スタッフ

『ゼロの使い魔F』スペシャル対談

アニメオリジナル展開はいかなる結末を迎えるのか?

まもなくクライマックスを迎える『ゼロの使い魔F』。前回のインタビューに引き続き、原作者でありシリーズ構成も務めるヤマグチノボル氏と、監督の岩崎良明氏とのスペシャル対談が今回も実現。アニメオリジナルの「エンシェントドラゴン」が生まれた経緯や最終話に向けての見どころ、そして気になる結末はどうなるのか? おふたりにたっぷり語っていただいた。

【プロフィール】

ヤマグチノボル(原作・シリーズ構成)
1972年2月11日生まれ、茨城件出身。血液 型B型。明治大学政治経済学部卒。自身の関わるゲーム作品をノベライズした『カナリア~この想いを歌に乗せて~』(角川スニーカー文庫)で小説家デビュー。2004年からスタートした『ゼロの使い魔』はシリーズ累計450万部の大ヒット。アニメ第4シリーズにあたる『ゼロの使い魔F』ではシリーズ構成も務める。

岩崎良明(いわさきよしあき)(監督)
1964年、山口県山陽小野田市生まれ、兵庫県神戸市育ちの男性アニメーション演出家。千葉大学卒業。代表作は「ラブひな」「極上生徒会」「瓶詰妖精」など多数。

岩倉大輔(いわくらだいすけ)(インタビュアー)
1980年生まれ、栃木県出身。ライター。2008年、出版社を退職しフリーのライター・編集者として活動開始。現在、『アニメージュ』、『オトナアニメ』、『メガミマガジン』、『声優アニメディア』などで執筆中。

明るい雰囲気の中でそれぞれの決意が描かれた「ド・オルニエール編」

4期から入った人にも 楽しんでもらえる展開を目ざして

―――――中盤戦となる第4話~第9話を大きく2つにわけると「ド・オルニエール編」と「エルフ編」になるかと思いますが、まず「ド・オルニエール編」を構成するにあたって意識されたことなどはありますか?

岩崎:
エルフ編から後半に進むにつれて、内容が重くなっていくことがわかっていたので、「ド・オルニエール編」では明るく楽しいラブコメ的なノリを重視しました。もちろん、のちのちの展開に繋がるヒントや伏線的なところもありますが、基本はキャラクターを楽しくかわいらしく描いていきたいなと思っていました。

ヤマグチ:
構成を切っていく上で、この辺りのお話について、細かい点で「何かこうしてほしい」みたいなことは言わなかったかなと思います。監督もスタッフの皆さんもお上手なので、何も言わなくても綺麗に料理してくれるのではないかと思っていたので。実際に映像を見ても、監督が言われたように明るく楽しい雰囲気になっていて、キャラクターが非常に活き活き描かれていると感じました。

岩崎:
ストーリー的なところでは、第5話にアンリエッタの鏡と才人の屋敷にある鏡が、第8話で出てくる「ワールド・ドア」に繋がっていく伏線になればいいなと思っていました。さらに、それを巡ってのルイズと才人の気持ち、そしてアンリエッタの思いが描ければなと。
あとは……ストーリーとはちょっと違いますが、第6話の温泉回のようなのんびりとした展開ですね。もちろんそれぞれの感情に大きな動きがあるわけですが、視聴者の方に楽しんでいただけるシチュエーションも入れられればなと。「ド・オルニエール編」には、そんな役割がありました。

―――――「ド・オルニエール編」では、アンリエッタやタバサの決意も描かれました。

岩崎:
ルイズと才人を描くのは当然なんですけれど、ほかのキャラクターの心情もしっかり描いていきたいという気持ちがありました。アンリエッタもタバサも何となく才人を好きになったというわけではなく、これまでの話数の積み重ねもありつつ、きちんと理由があってそうなったのだと。そこははっきりさせておきたかったですね。

ヤマグチ:
アンリエッタについて言えば、才人のことが好きという事実はありますが、実は本気で才人のことが好きなわけではないんです。物語の中にもあったとおり、アンンリエッタはルイズが持っているものを何でもほしがる人間で、どこか意地になっているだけなんです。そういうお姫様らしさがしっかり出ていてよかったなと思います。

―――――温泉での喧嘩は迫力満点でした。

岩崎:
あちらはヤマグチ先生が書かれた部分ですね。

ヤマグチ:
そうですね。ぜひ書いてくれと言われて(笑)。ここで意識したのは、ルイズとアンリエッタはお互いに「友達」と言い合っていますけど、実は全然友達でも何でもないというところですね。つまりふたりは、いわゆる「友達」というものがどういうものなのか分からない人たちなんです。王族と貴族ということもあって、その辺の感覚が普通の人とは全然違っているんです。親友なんて言っていますけど、どう見ても違いますよね?(笑) ただ、今回の件をきっかけに、本当の友達になっていくんじゃないかと思います。

―――――あそこまでして友達になれるというのはすごいことです。

ヤマグチ:
現実だったら、もう友達にはなれませんよね(笑)。そこもふたりの感覚がズレている部分なのかなと。

岩崎:
なるほど(笑)。

ヤマグチ:
それに、もともとルイズの持っているものは何でもほしくなって、手に入れたら手に入れたで飽きちゃうタイプですからね。もし才人を自分のものにしても「たいしたことなかったわ」って、ぽいって捨てることだってあったかもしれません。でも、それでいいと思うんです。姫様なんてそれくらいの人間じゃないと務まりませんよ。

―――――タバサもまた王位継承の問題があったり、才人への気持ちがあったりと、心の動くポイントがありましたが、この辺りで意識されたことなどは?

岩崎:
タバサは感情表現が小さいというのもあって、アニメを通してその感情を描くのに苦心しました。そこで重要になったのがイルククゥの存在ですね。彼女にいろいろ言わせることでタバサなりの悩みが描かれたわけです。タバサひとりではうまく行動できませんから、そういう意味では、タバサにとっても僕たちにとってもイルククゥの存在は大きかったですね。

―――――今回ご自身で初めてアニメ版のシリーズ構成を担当されることになった理由は何でしょうか?

ヤマグチ:
1クールで完結ということが大前提だったので、「1クールだと原作通りやるのは無理でしょう」と感じたんです。ちょうどオリジナル展開について、スタッフからも相談をいただきましたので、あとは話し合いの中で、アニメはアニメで締めるのならば、全体の流れを決めるのは原作者の僕がやるのが妥当だろうということで、やらせていただくことになりました。僕としては「最後はこうなる」という基本は、原作とまったく変えていないつもりです。そこを押えたうえで過程を全然別ものにしたものです。見た目は全然違っても根っこは変えてませんから、僕としてはこれがベストではないかなと。

―――――タバサが布団に潜り込んでいるシーンは、見ているこちらもドキドキしました。

ヤマグチ:
タバサの行動に関して、特に細かい注文はしていなかったのですが、表情がないぶん、そうやって行動で態度をしめしてもらえるとわかりやすいですよね

エルフと人間の価値観の違いがキーとなった「エルフ編」

新キャラクターふくめて 生き生きとふくらんでいく描写

―――――もうひとつ中盤戦で肝になるのが「エルフ編」ですが、こちらを構成する上でのポイントはどのような部分だったのでしょうか。

ヤマグチ:
まずハルケギニアの人々とエルフの違いが出ればいいなと思いました。
岩崎:
文化の違いという部分はまさにいちばん出したかったところですよね。その上で違いをどう乗り越えていくかという部分が、「エルフ編」のキーだったのかなと。
ヤマグチ:
今回のシリーズは特に原作の要素をカットしていますし、エルフを登場させたときにエルフが実際のところどう描かれるかという心配はありましたが、本当にうまくまとめてくださったなと思いました。思っていた以上の完成度でしたね。
岩崎:
最初はエルフを出すか出さないかというところをお話をしていましたね。でも、やはりエルフの世界とハルケギニアの世界の違いは見せたかった。エルフたちはただ国が違うというレベルじゃなくて、違う動物くらいに思っているんです。中にはルクシャナのように人間に対して敵意を持っていないエルフもいるんですけど、やっぱり人間に対しては全然違う動物という認識なんです。その上で仲良くしている。その立ち位置の違いは明確にしておきたかったところですね。
ヤマグチ:
それにルクシャナのような魅力的なキャラクターもいますしね。彼女がここまで人気だとは思いませんでした(笑)。
岩崎:
ただ、ルクシャナやアリィーとハルケギニアの人々をどう和解させるか。最終的には和解というかうまく意気投合しましたけれども、非常に悩みました。かなり詰めて話し合いをした記憶があります。これに関しては、ギーシュもアリィーもモンモランシーとルクシャナというガールフレンドに弱いという共通点が出たことで、解決策というかそのあとの展開が見えましたね。

―――――「エルフ編」で面白かったのが、エルフの政治体制ですね。この辺りもハルケギニアの人々との違いが強調されているのかなと感じましたが。

ヤマグチ:
ハルケギニアは絶対王政という政治体制なので、その点でもエルフたちと考え方が違うんです。民主主義が原則のエルフからすれば、前近代的な政治体制を敷いている人間たちより、私たちのほうが進んでいるという意識がある。そういうところもエルフが人間を蛮族だと考える理由なんです。ただ、人間より進んでいても、喧嘩はするしどうしようもない部分は必ずある。悪いところは悪い……ということを上手く描きたいなと思いました。

岩崎:
民主的だからこそ扇動されてしまう部分もあるんですよね。

ヤマグチ:
そうなんです。実はわりと過激なほうに走りやすいんですよ。それがアニメでも出るといいなと思っていました。原作でも、民主主義という制度の下では鉄血団結党のような集団が出てきやすいということは書いていましたので。やっぱりそこが民主主義の怖いところだと。もちろん絶対王政に比べたら全然マシだとは思いますけどね(笑)。

―――――そして「エルフ編」ではティファニアがキーパーソンとなりました。この点はいかがですか?

岩崎:
ティファニアはメインキャラクターのひとりですし、しっかり描きたいという思いはあったのですが、引っ込み思案というか一歩引いて見守るタイプの女の子なので、いかに積極的になる部分を作るかが課題でした。そういう意味では、ティファニアがキスをするシーンはわりと彼女の頑張った部分が出たかなと思います。

ヤマグチ:
ティファニアもやっぱり女の子だったんだなと思いますね。

―――――それに対する才人の気持ちを描く上で意識されたことなどは?

岩崎:
才人はシリーズを通して、浮気というかふらふらするんですけれども、基本的にはルイズ一筋な男なんですよ。誘惑されるときも才人から乗っていくわけではないんです。だから第5話でアンリエッタにキスをされたときも、第7話でティファニアにキスされたときも、才人は受け身だった(笑)。瞬間的には流されてしまうけれども、あとで後悔するというパターンが多いんです。才人はあくまでルイズが好き。その前提を崩すことなく、それぞれのキャラクターを描くようにしました。

ヤマグチ:
ティファニアはルイズとの対極のヒロインとして作ったキャラクターではあるので、そういう意味では才人が最後にふらふらする相手としては、ふさわしかったのではないかと思いますね。

新キャラクターふくめて 生き生きとふくらんでいく描写

―――――中盤戦を振り返ってみると、全体的に女性陣が活躍するお話だったと思うんです。「強い女性」というと大げさかもしれませんが、この辺りは意識して描かれていたのでしょうか?

岩崎:
ルイズ以外の女性キャラクターと才人の関係をいかに決着させるか。それを主軸に描写しようとしていた部分があるので、見ている側にとってはわりと力強い印象になったのかなと思います。第10話までで、彼女たちは才人との関係に対して自分なりの結論を出したわけですからね。ただ、あえて「強い女性」を描いたということではありませんでした。

ヤマグチ:
僕の場合、原作でもそうなんですけど、やっぱり男性が女性を守るべきだという考え方があるんですよ。古い考え方かもしれませんけれど。自分が原作を書く上でそういう部分を大事にしていることもあって、女性の強さを意識的に描こうというつもりはあまりないんです。もちろん女性は女性で大切な決断をしますけれど、最終的に決着をつけるのは男の決断力なんじゃないかなという気持ちのほうが大きいですね。

―――――ほかの女性陣が結論を出していく一方で、ルイズもまた才人への気持ちをはっきりさせるようになりました。

岩崎:
そうですね。第5話で一度家出をして帰ってきたくらいから、基本的なスタンスがはっきりしたのかなと思います。しかも、それが才人にも伝わった。そういう意味では、第5話のラストでひとつ次の段階に進めたんじゃないかなと。もちろん、それは外からの要因があったおかげといいますか、他の女性陣の行動のおかげで自分の気持ちがはっきりしたという部分はあるでしょうね。

―――――タバサに「ありがとう」と言っていましたね。タバサとしては結構つらいところではあったんじゃないかなと。

岩崎:
それはあるでしょうね。ただ、それがタバサのさらなる決意に繋がったのかなとも思います。

ヤマグチ:
この一連の流れを見ていて、ルイズも我慢強くなったなと思いますね。才人はあっちへフラフラ、こっちへフラフラしているのに(笑)。いくら自分のことを一途に思っているからって、普通は無理だと思うんですよ。でも、ちゃんと才人と向き合うようになった。今までさんざんルイズもひどいことをしてきたから、おあいこなのかなと(笑)。どちらにしてもふたりの関係が固まったのはいいことだなと思いました。

アニメオリジナルの「エンシェントドラゴン」が登場した理由

ドタバタ要素満載のお風呂回でも気をつけている才人の描き方

―――――そして、完全にオリジナルの展開となった第10話についても伺っていければと思います。まず「エンシェントドラゴン」というオリジナルの敵が登場した経緯を教えていただけますか?

ヤマグチ:
こちらは僕がシナリオを切った構成なんですけれども、まず前提としてあったのが、原作どおりに話を進めていくのは無理だということでした。これはもう絶対に無理だと。ということで、じゃあクライマックスに何を出そうかとなったときに、非常に短絡的ではあるんですけど、「ファンタジーといったらやっぱりドラゴンだよね」ということで、ドラゴンが思いついたんです。僕は王道とかお約束が好きなので、第1期の空中戦のような、ああいうものが見たかったというのもあります。その上で、原作では大地の怒りということで大陸隆起が起こるんですが、エンシェントドラゴンもまた自然の怒りの象徴として出せたらいいなと。まずひとつに、そういった原作との兼ね合いがありました。
もうひとつは最終回なんだから単純に大きな敵と派手に戦わせたいという思いがありました。アニメならではの派手な表現ができるだろうと。原作は小説という形態もあって、どうしても理屈っぽくなってしまうんです。そういうややこしさを抜きにした派手な戦いを見たかったし、きっと見ていただく方にも楽しんでいただけるのではないかと思ったんです。そういうわけでこのエンシェントドラゴンを出させていただきました。

―――――最初にドラゴンを出そうとなったときに、監督はどう反応しましたか?

岩崎:
単純にどういう風に描写しようか非常に悩みました(笑)。あまり大きすぎてもアニメ的に表現できなくなりますし、小さいと小さいで敵っぽく見えませんから。

ヤマグチ:
設定的な部分では、とりあえず「でかい」としか言っていませんでしたからね(笑)。「でかければでかいほどいいんで」と。話し合いの末に、まず「このくらいが限界でしょう」という大きさの限界値を出していただいて、それで決定したという流れですね。

岩崎:
最終的には大きさもある程度大きくして、デザインもただのドラゴンとはちょっと違う雰囲気を持たせて、現在の形が完成しました。最後の敵、世界の敵という感じも上手い具合に出せたのではないでしょうか。

―――――ただ、これだけ大きなドラゴンを動かすとなると、その描写もまた大変な作業なのではないでしょうか?

岩崎:
効果なども含めて、スタッフのみんなが苦心しているところではありますね。ただの生き物というよりは自然物が動いているような雰囲気を持たせたかったので、生き物と自然物の中間くらいの存在をイメージしながら描いています。

ヤマグチ:
エンシェントドラゴンは意思はあるけれど、どちらかというと自然災害に近いんです。それもあって、たとえばゴジラのように誰も止められない感じが出ればいいなと。

岩崎:
ですから、いかにビジュアルで邪悪さを出していくかというところは工夫しましたね。たとえば火を放つの表現なども普通の炎ではなくて、どこかマグマっぽい雰囲気をプラスしていていたり。体が大きいだけでは何とかすれば倒せるんじゃないかと思われるので、もっと大きな存在であることを画としても表現したかったんです。ほかには体から出る瘴気などもまがまがしいものにしています。

ヤマグチ:
映像を見せていただいて、本当に素晴らしい表現だと思いました。基本的に口から炎を出すとか、そういう細かい設定についてはお任せしたんです。とにかく大きいものが暴れている感じでと伝えただけなのに(笑)、こんなに迫力のある映像に仕上げていただいて、ありがたい限りです。

―――――これほど大きいと本当に倒せるのかという不安もありますよね。

岩崎:
いちばん悩んだのはそこです。あまりに大きなドラゴンにしてみたものの、どうやってこいつと人間を戦わせるんだという、さらなる難題が出てきてしまって……。もちろん、このドラゴンとどう戦うか、その上でどうなるのかという結末は出せましたので、ぜひこの先の展開を楽しみにしていただきたいですね。戦い方が見えたところで、ストーリーも非常に良い方向に進みました。

―――――では、結末としては非常に手応えを感じていると。

岩崎:
アニメ版ならではの展開で苦労した分、今までの伏線や色んなエピソードを上手くまとめることができたと思います。その手段みたいなものは、ヤマグチ先生が最初からずっとお話されていたことではあるのですが……。

ヤマグチ:
そうですね。わりと最初の構成どおりに展開しています。最後の打ち合わせがいちばん時間がかかりましたけれど、かなりいい感じにまとまったかなと(笑)。

岩崎:
ドラゴンというアイデアが出たことで、すべてがピタッとはまったという感覚はありますね。ただ、安易に、と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、わりと楽に終わらせることも可能ではあったんです。ドラゴンというちょっと面倒くさい存在を出さずに展開をまとめることもできましたから。でも、それを避けずに描いたことで、より上手くまとめられたのかなと思います。

―――――第10話について、もう少し詳しく伺いたいと思います。こちらの話数ですと、教皇がエンシェントドラゴンに喰われてしまうという衝撃的な展開がありました。こちらもヤマグチ先生のアイデアなのでしょうか?

ヤマグチ:
いえ、実は僕ではないんです。こちらの方がよりドラマチックだろうということで、脚本のヤスカワ(ショウゴ)さんにご提案いただきました。デルフの件に関しては、僕からの提案でした。

―――――非常にインパクトのある最期でした。

ヤマグチ:
正直、最初は何も殺すことないじゃん! って思いましたよ(笑)。

一同:
(笑)

ヤマグチ:
ただ、確かにそうすることで盛り上がるのは間違いありませんし、エンシェントドラゴンの行動原理や教皇のキャラクターもより深まるんですよね。それを伺って、じゃあそれならということで、この教皇の結末が用意されました。

岩崎:
大きかったのはエンシェントドラゴンの行動原理ですね。なぜ動くのかという設定を考える上で、教皇が大きな役割になると。それを思いついたことで、お話の流れもよりスムーズになったというか、いろんなことが合致しました。これからエンシェントドラゴンはルイズやティファニアを狙ってくるのですが、その流れが見えたのもエンシェントの行動原理が深まったおかげかなと。もっとも、教皇のファンの方には非常に申し訳ない話ではありますが。

―――――教皇がラスボスになるという展開を予想していたファンも多いと思いますが。

岩崎:
教皇のキャラクター自体にどこか腹黒さがありますからね。原作でもそうですよね?

ヤマグチ:
何か腹に一物持っている感じです(笑)。

岩崎:
きっと彼はある大きな考えに従って前に前に進んでいくタイプの人だと思うんです。しかし、だからといって彼が悪かというとそういうことではない。わりと善人だと思うんですよ。『ゼロの使い魔F』を最初に立ち上げるときは、腹に一物あって、最終的に才人たちを騙すとか裏切るといった行動をするかもしれない……という話もあったのですが、構成を話し合っていく中で、彼はやっぱり善人という感じでまとまってきたので、結果的にそういうキャラクターに戻したという感じですね。第1話や第2話のあたりから怪しい雰囲気をまとってはいましたが、基本的にはそういう人間なんだということを前提に、キャラクターを描いていました。

―――――今回の教皇の死が原作にも影響を与える、なんてことはあるのでしょうか。

ヤマグチ:
それは何とも言えませんが、僕は根本的に悪い人間というのが描けないんですよ。悪い奴を描いても、どこかいい人になってしまう。自分でもダメだなとは認識しているんですけどね(笑)。

岩崎:
それぞれの立場から見て対立することはありますけれど、すべてのキャラクターが自分の立ち位置で善をなそうとしているのかなとは思いますね。ジョゼフなども含め。そういった意味では、『ゼロの使い魔』はいろんな立ち位置の人がいますよね。

ヤマグチ:
そうですね。いちばんそれに当てはまるのはエルフの人たちなんでしょうけど。

ルイズと才人の物語は最後の最後まで見逃せない!

ティファやタバサの想いも交錯しつつクライマックスへ

―――――第11話、第12話は、教皇ですら歯が立たなかったドラゴンとの戦いがメインになるかと思いますが、見どころを教えていただけますでしょうか?

ヤマグチ:
ひとつ言えるのは現代兵器が出てくるということですね。『ゼロの使い魔』は、ファンタジーと現代兵器の戦いというのがひとつのテーマでもあるので、どうしても現代兵器を出したかった。今回もそれを出すことで、うまくはまってくれたかなと思います。

岩崎:
そういう部分もありつつ、最終的には色んなキャラクターの頑張りが実を結ぶというところでしょうか。詳しくはぜひ本編を見ていただきたいのですが、やはりルイズと才人の関係がドラゴンとの戦いでも重要なものになってきます。

―――――才人の新しい力「リーヴスラシル」の副作用を知ってからのルイズを描く上で、何か意識されたことはありましたか?

岩崎:
ルイズには、単純に才人が好きという気持ちと、今までいろんなことをしてくれてありがとうという感謝の気持ちがあると思いますが、第10話からはもっと別な立ち位置から才人を見つめるようになります。新しい感情が生まれるということではありませんが、ルイズの中での才人への想いがまた一段階上のレベルに上がるんです。それが彼女の行動に直結するという部分は意識的に描いていますね。

ヤマグチ:
リーヴスラシルの力を使い続けると才人は死んでしまうということを知れば、いくら才人が「自分は戦う」と言ってもルイズは絶対に止めると思うんですよ。今後は戦いを避けようとする動きがより鮮明に出てくると思います。

岩崎:
そうですね。いかに才人を戦場に出さないかということをルイズは考えていくでしょうね。

―――――ふたりの関係で「ここに注目」というポイントがあれば教えてください。

岩崎:
ドラゴンとの戦いが近づく中で、ふたりとも戦いへの決意を固めていくのですが、それ以上にルイズの才人への思い、才人のルイズへの思いが強くなっていきます。その思いがふたりをどんな行動に駆り立てるのか、そして行動の結果、ふたりはどうなってしまうのか。そこがいちばんのポイントになるのではないでしょうか。

ヤマグチ:
ルイズは健気だし、才人は頑張りますよと、それにつきますね。あとはとにかく戦闘シーンを楽しんでいただきたいです。かなりカッコいい仕上がりになると思うので。

岩崎:
頑張ります(笑)。映像的にも本当にスタッフひとりひとりが気合いを入れて制作していますので、期待していただいていいかなと。特に最終話のアクションシーンは必見です。それと、エンディングですね。

―――――エンディングに何か仕掛けが用意されているんですか?

岩崎:
原作とは違ったエンディングになりますよとしか(笑)。

ヤマグチ:
エンディングは僕からリクエストさせていただきました。これだけは絶対にやってほしいと。結末というか根っこの部分は変えていませんが、小説では絶対にできないエンディングなので、そこだけはオリジナルとして入れていただきたかったんです。

岩崎:
ドラゴンとの戦いがどうなるのか、才人とルイズはどうなるのか。そして才人自身にも解決しないといけないことがあるので、それがどう解決するのか。ある程度決着させたといいますか、しっかり描くようにしましたので、ぜひ楽しみにしていてください。

―――――まもなくシリーズが完結しますが、今の率直な感想を聞かせていただけますでしょうか。

ヤマグチ:
あっという間だったという気持ちと、長かったなという気持ちと、どちらの気持ちも同じようにありますね。何よりも、こうして4期にわたって続いたことが本当に感慨深いです。最初はまさかこんなに長く続くシリーズになるとは思わなかったので。これまで関わってくださったすべての皆さんに感謝したいです。

岩崎:
まだまだ作業のど真ん中で終わったという感覚はないのですが、こんなに長く続いたシリーズが終わるというのは、やはり胸がいっぱいになりますね。僕自身が監督を務めたのはシリーズの半分、第1期と第4期だけなんですけれども、本当に関わることができてよかったです。もちろん、こうして無事に完結を迎えられそうなのも、第2~3期の監督をされた紅優さんを含め、たくさんの人の頑張りがあってこそです。けっして僕ひとりではここまでまとめることができなかったと思います。今は作業が終わったスタッフやアフレコが終わったキャストの皆さんの気持ちを繋げるべく、最終話を頑張って作っていこうという気持ちでいっぱいです。

ヤマグチ:
最終話の完成を楽しみにしています。

―――――では、最後にファンの皆さんにメッセージがあれば、どうぞ。

岩崎:
今お話しましたように、スタッフ全員が最終話に向けて頑張って作業をしているところですので、細かい部分まで注目していただければなと。そして最後の最後まで見どころがありますので、才人とルイズはもちろん、その他のキャラクターたちが迎える結末をしっかり見届けてあげてください。

ヤマグチ:
アニメに負けないよう原作も頑張っていきますので、アニメともどもよろしくお願いします。原作は原作で違った展開を見せていきます。エルフのことや外伝との関係などまだまだ描きたいことがたくさんありますので、こちらもぜひ楽しんでいただけれたらなと。

【2012年3月吉日 メディアファクトリーにて】